『緋の河』 読後抜粋

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黙っていたら伝わるものも伝わらずに終わってしまう

 

ひとつやってもっと欲しがるヤツなら最初から、ひとつも

食わせる価値がねえ

 

自分の言葉が彼に通じていることがとても嬉しい

 

父に殴られようと兄に疎まれようと、母が悲しもうと、

生まれ落ちたこの体と性分をせめて自分だけは好いていたい

 

秀男を囃す者たちの内側に在る、鬱憤の肥やしにだけはなるまい

 

頭を使え。

勉強できることと頭がいいことは違うぞ

 

信頼関係を結ぶために標的を必要とする友情が、そう

長続きしないことも知っている

 

章子は弟の気持ちを汲むことができる。

それは彼女が生まれ持って大切に磨き続けている心の

水晶玉なのだ

 

ひとは気持ちのいいことが好きなのだから、気持ちのいいところを

気持ちよく撫ぜてあげればもっと気持ちがよくなるのだ

 

何より彼女が楽しそうにしていることが、秀男自身も楽しいのだ

 

威圧的な男には、そうふるまわなければならない無意識の

理由がある

 

生きる技術がなければ、いたずらな敵意に振り回され終わってしまう

 

その先にどんな賛辞が待っていても、肯定が先に来ないのでは

気持ちがささくれる一方だった

 

人間、痛い思いしたらそのぶんええ思いもせなあかん

 

ひとの言いなりになっていると、いつか自分を

すり減らしちゃうんだから

 

秀男と章子が捨てたものがあるとすれば、どこかでそれを大切に

する人間がいるということだった

 

出来るだけ前向きな文句を言ってちょうだい

 

どんな親切にも多少の利ざやがなければいけない

 

どんな善人にも、不意に襲ってくる「魔」がある

魔が差した顔を見分けられるようになった分、気づかないように

ふるまう技術も身につけた