『神様たち』 読後抜粋
不道明を拝むということは大日如来、つまり、宇宙の中心に
向かって拝むという意味合いになる
香楓の笑顔は人々の頬をゆるませるためのものではなく、自己を
守る防御策としての仮面。
その痛々しさに鬱陶しさを感じ、辟易としてしまう私は、何様だろう
律に黙ってほしかった。律が香楓を責めるたび、私が律を制するたび、
香楓の矛先は私に向く。
いびつな片思いが憎しみとなり、狂気へと育つ
私、自分の醜さを知って、こわかった。
謝っていれば、このこわさが成仏する気がするの。ごめんね
ばかなことをした勇気も、ばかなことをしなかった後悔も、
かけがえのない宝物だ
自分がやりたくてもやれないことを誰かがやってしまうと、憧れから
憎しみに変わるのだろうか
人がよろこぶ様子を見るのは清々しいね
ビョルン・アンドレセン『ベニスに死す』
自己が圧し潰されれば、何かを憎みたくてしかたがなくなる
悲しくて惨めな自分を認めたくなくて、何かを憎むのだ
私は自分の拙い悪意を恥じた
正しい生い立ちの人ほど、よその不幸によりそおうとするのだ
善を装って人たらしをしてきた祖父と私には、天性の勘みたいな
ものが備わっている