『銀閣の人』 読後抜粋
感情をかくすという政治家に、いや人間そのものに必要な
初歩的な心の技術がまったく身についておらず、今後も
身につく見こみがない。愚か
政治家の才能というのは、ひっきょう敵を見つける才能であり
自責の念に駆られぬ才能なのである
尊敬と見えて、じつは嫌悪の念のあらわれにほかなりませぬ。
おきらいだから、上に立ちたい
他人というのは、人間にとって、この世で最大の不確実な
要素だからである
かたわらに他人がいないというのは、自己が十全であるための
最高の好条件なのだ
人の自由のうち究極のものは、人からの自由にほかならぬ
その自由の価値をつきつめた境地にある人類普遍の価値こそが
「わび」
ー無駄が減る。ということが、これほど人間心理にとって
(それ自体が、快楽とは)はじめてそれに気づかされた
およそ長期にわたる不毛なあらそいを最もきらう
良質の質朴、良質の簡素
「わび」は静的な状態である。しかしただの」状態にすぎぬ
それに時間の変化を足したものが、すなわち「さび」
良質の生活をたもつことにこそ、のこりの年月はささげられるべし
孤独はいわば意志の力で後天的に獲得するもの、家族というのは
先天的な連帯のほうを代表する