『象牙の穴』 読後抜粋
確実に一人の人間を殺しているのに、少しも良心の呵責の
色が見えないのが、僕には引っ掛かるんだ
罪の意識があれば、その屈辱にも耐えられる
離れようとする気配を感じると、敏感に嗅ぎつけ、
子供のように縋りついて来る
軽い精神分裂の兆候ではないだろうか
感情の制御ができず、弥生に当たったのではないか
一方的な話に不快になりながら
あの人の誇りは、妻からの離婚を、絶対許さない
余りの非常識さに腹を立てるより、気持ちが悪くなる
己を知る点においても、なかなか賢い男
幻想し、幻想のまま行動し、そうではない現実を
見せつけられた
本能的に知っていたに違いない。
だが、己の頭脳への過信
どんな賢い女でも、大悪人でも、恐怖心の前では、案外
真実を喋ってしまうことがある
『夜のない日々』
悪魔に身を売る決心をし、そういう行動をしながら、江見の
弱さが彼を苦しめている。
その苦しみの責めを自分だけで受け止めずに、真美のせいにもしている