『マトリョーシカ・ブラッド』 読後抜粋

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すまないー喉もとまで出かかった台詞をのみ込んだのは、

同僚であっても弱みを見せたくないという、誰の役にも

立たない刑事の習性だった

 

私憤にまみれた暴言は、歩んできた己の刑事人生を

裏切るのもだった

 

不運であっても不幸ではない

 

間違って、その間違いをごまかすために次の間違いを

犯している

 

自堕落で身勝手で、思い込みが激しくて、苦手なタイプ

けどー我を忘れてクスリに溺れる人ではない

 

少なくとも刑事くらいは、被害者の怒りを想像し、無念を

晴らすために情熱を燃やさなくてはいけない

 

人生を棒に振る価値が、正しさにはあるのか

 

上に尻尾を振るだけの奴は、いつか足を引っ張ります

 

顔に泥を塗ることにはなっただろう。だが、それを

恐れ逃げ回った結果、傷口は大きく広がってしまった

 

気乗りはしないが断るのも面倒だ。

流れに身を任せた。

 

誰かの都合の中でおれたちは生きてんだ。

おれたちにはおれたちの都合がある

その都合を通すには、大きな都合に従う方が賢い

 

失敗を抱えて糧にできる人間ならば、むしろ歓迎したい

なぜならその男は、間違いなく強くなるから

 

なるようになるのは嫌で、けど、どうにかする力はない

 

与えられた人生は仕方ない。今いる環境も仕方ない。

世の中の仕組みも仕方ない。けれど、その中で、

何をするかは決められる

 

あんたみたいのが一番気に食わねえ。てめえのやったことから

逃げて、なんとなくごまかそうって腰抜けがな

 

このままうやむやで終わって、それで満足ですかっ

 

気にくわないのは、そいつらの都合におれたちが

従わなくちゃいけないこと

 

理解できずとも、彼らの本当の声を聞いてみたい

 

犯した小さな間違いを、間違いで覆ったこと