『白き糸の道』 読後抜粋
自分で為すべきこと、為せることを、あたしの力で
見つけてみたい
己にしかできないことで、誰かに必要とされ
何かを為したいのだ
己が向けた敵意は、また敵意となって返ってくる
母の軽侮が伝わるから、父はますますひねくれ、
酒におぼれるのだろう
そうやって懸命になれることがあるのは、すばらしいことだ
真剣な思いが、聞き手にも届くときの喜びを、お糸は
噛みしめていた
弱さゆえに、つよい心では気づかないものをみている
この暮らしに安緒しながらも、なにも進歩がない日々に
倦んでいるいることはーいや、そのことにすら目をそむけている
ことは、不幸なのではないか
「己の為すべきこと」を為してきた男の表情は
なんとすがすがしいのだろう